【研究者向け/査読前論文】アンカーRBDを発現する自己増殖型RNAコロナワクチンの安全性と免疫原性:無作為化・オブザーバーブラインド第1相治験結果

赤畑渉(VLPセラピューティクス・ジャパン代表)と共同研究者らは11月22日、査読前論文(プレプリント※)「Safety and immunogenicity of SARS-CoV-2 self-amplifying RNA vaccine expressing anchored RBD: a randomised, observer-blind, phase 1 study」を、プレプリントサーバ medRxiv で公開しました。

※プレプリントは、査読前の暫定的な研究成果発表です(medRxiv 注記抜粋)。

◆ 本論文要旨・英語原文(全文PDFも閲覧可):https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.11.21.22281000v1

◆ 本論文要旨・参考和訳

【背景】VLPCOV-01はナノ脂質粒子に包まれた自己増殖型mRNAワクチンであり、膜貫通型のRBD(コロナウイルスのS蛋白質受容体結合部位)を発現する。

【方法】VLPCOV-01の国内第一相臨床試験は 医療法人平心会大阪治験病院で2022年2月16日から2022年3月17日にかけて行われた。参加者は18歳から55歳、もしくは65歳以上の健康成人であり、BNT162b2(ファイザー製mRNAワクチン)を6か月前から12か月前までに2回接種済の者とした。参加者はランダムに振り分けられ、VLPCOV-01(0.3µg, 1µg, 3µg)、BNT162b2(30µg)、もしくはプラセボ薬が筋肉注射された。有害事象(副反応)は免疫後6日まで収集され、それら全ては4週間後まで追跡された。免疫効果測定はカットオフを29日後とし、IgG抗体価と中和抗体価を測定した。

【発見】92人の健康成人が登録し、60人がVLPCOV-01を接種した。重篤な副反応は報告されず、事前に指定された試験中止事象も生じなかった。VLPCOV-01はSARS-CoV-2のRBDに対する強いIgG抗体を誘導し、それは非高齢者群において26週間後まで持続した。その幾何平均は、BNT162b2/30 µg群で3166 (95% CI 1619–6191) であったのに対し、VLPCOV-01では0.3µg群の5037 (95% CI 1272–19,940) から3 µg群の12873(95% CI 937–17,686) の範囲であった。高齢者では、接種後26週でのIgG抗体価がBNT162b2/30 µg群で4183 (95% CI 1436–12180) であったのに対し、VLPCOV-01 の3 µgでは 9865 (95% CI 4396–22138) であった。中和抗体価はSARS-CoV-2の様々な変異体に対して見られ、それらはIgG抗体価と強く関連していた。 (r=0.950, p<0.001).

【考察】VLPCOV-01は少ない投与量で、BNT162b2に匹敵する免疫原性がみられる。この発見は、VLPCOV-01のCOVID-19に対する追加接種ワクチンとしてのさらなる開発と、自己増殖型mRNAワクチンプラットフォームの確立の可能性を支持するものである。

【資金】国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の課題番号JP21nf0101627の支援を受けた。

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VLPセラピューティクス・ジャパンについて

VLP Therapeutics Japan株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:赤畑渉)は2020年、米国VLPセラピューティクスの100%子会社(当時)として設立されました。2024年現在、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)*1、AMED先進的研究開発戦略センター(SCARDA)*2 及び厚生労働省*3 の支援により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)等に対するワクチンを、VLPセラピューティクス保有の自己増殖RNA(レプリコン)技術を用いて研究・開発中です。

  1. AMED事業名:令和2年度「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」(2次公募)/課題名「自己増殖RNAテクノロジーを用いたわが国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」
    https://www.amed.go.jp/koubo/11/02/1102C_00002.html
  2. AMED SCARDA事業名:令和5年度 「ワクチン・新規モダリティ研究開発事業(一般公募)」/課題名「レプリコンプラットフォームテクノロジーを用いた今後出現する株を含めたユニバーサルコロナワクチン開発」
    https://www.amed.go.jp/koubo/21/02/2102C_00004.html
  3. 厚生労働省:ワクチン生産体制等緊急整備事業(第2次公募)採択結果
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20482.html
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VLPセラピューティクスについて

VLP Therapeutics, Inc.(本社:米国メリーランド州ゲイサーズバーグ、CEO:赤畑渉)は2013年、世界の「満たされていないメディカル・ニーズ」に応え、従来のワクチン療法を一変する革新的な治療法を開発するため、赤畑渉が上野隆司博士、久能祐子博士らと設立しました。2024年現在、がんに対する治療ワクチンと、マラリア、デング熱、インフルエンザ等感染症に対する予防ワクチンの研究開発を進めています。

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赤畑渉(あかはたわたる)について

1997年、東京大学教養学部卒業、京都大学人間・環境学研究科入学。京都大学ウイルス研究所の速水正憲教授のもとHIVワクチンの研究開発に携わり、2002年に博士号取得。同年~2012年、米国立衛生研究所(NIH)ワクチン研究センター勤務。2009年からウイルス様粒子(VLP)を使ったチクングンヤ熱ワクチンを開発。2010年、同ワクチン研究成果を米科学誌Nature Medicineで報告、VLPが表紙を飾る*1。2012年、同ワクチン他3種類のアルファウイルスワクチン開発でNIH最高賞Director’s Award受賞。現在、VLP Therapeutics, Inc. CEO・創業者、VLP Therapeutics Japan株式会社 代表取締役・創業者・最高研究開発責任者、東京工科大学 客員教授、京都大学医学研究科 特任准教授、株式会社フェニクシー スペシャルフェロー。

  1. Wataru Akahata et al. A virus-like particle vaccine for epidemic Chikungunya virus protects nonhuman primates against infection. Nature Medicine 16, 334–338 (2010)
    https://www.nature.com/articles/nm.2105