【研究者向け/査読前論文】新型コロナウイルス変異株レプリコンワクチンVLPCOV-02の健康成人における安全性と免疫原性(第1/2相臨床試験 Part 1 結果速報)

VLP Therapeutics Japan株式会社(VLPTジャパン)の赤畑渉と共同研究者らは9月6日、査読前論文(プレプリント※)「Safety and immunogenicity of VLPCOV-02, a SARS-CoV-2 self-amplifying RNA vaccine with a modified base, 5-methylcytosine, in healthy individuals」を、プレプリントサーバ medRxiv で公開しました。

※プレプリントは、査読前の暫定的な研究成果発表です(medRxiv 注記抜粋)。

【論文(英語原文)】https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2023.09.04.23294493v1

【論文要旨(参考和訳)】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの有効性を低下させる懸念のある変異株の出現が続いているため、新たな予防戦略が必要である。本研究チームは、BNT162b2(ファイザー製mRNAワクチン)と同程度の免疫応答を示す、脂質ナノ粒子カプセル化saRNAワクチンであるVLPCOV-01(VLPTジャパン製レプリコン1ワクチン)の反応原性を低下させるために修飾塩基5-メチルシトシンを組み込み、また、免疫原性を向上させるために発現される抗原をブラジル(ガンマ)変異株由来の受容体結合部位に置き換えることによって改良した。本研究では、このように改良されたVLPCOV-02を用いたワクチン追加接種第1/2相臨床試験(jRCT2051230005)を、健康でワクチン接種歴のある日本人(N=96)を対象に行い、用量漸増第1相試験パートの結果速報を行った。用量の増加に伴う局所および全身性の有害事象は観察されたが、それらは一般的に軽度または中等度と評価された。最も多く発現した事象は、圧痛、疼痛、疲労、筋肉痛であった。新型コロナウイルス血清免疫グロブリン価は、接種後4週間までに上昇した。VLPCOV-02は良好な安全性プロファイルを示し、VLPCOV-01の追加接種第1相試験と同じ用量において有害事象の頻度が低く、発熱が少なかった。これらの所見は、VLPCOV-02のさらなる研究を後押しするものである。本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の課題番号 JP21nf0101627 の支援を受けた。

  1. レプリコン(次世代mRNA):少量の接種で十分な抗体が作られる、次世代型ワクチンの基盤技術。現行のmRNAワクチン技術と比べて10~100分の1程度の接種量となることから、短期間で日本国内全人口分の製造が可能となることと、副反応が低減されることが期待される。

【著者】Masayuki Aboshi, Kenta Matsuda, Daisuke Kawakami, Kaoru Kono, Yoko Kazami, Takashi Sekida, Mai Komori, Amber L. Morey, Shigeru Suga, Jonathan F. Smith, Takasuke Fukuhara, Yasumasa Iwatani, Takuya Yamamoto, Nobuaki Sato, and Wataru Akahata*(*責任著者)

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VLPセラピューティクス・ジャパンについて

VLP Therapeutics Japan株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:赤畑渉)は2020年、米国VLPセラピューティクスの100%子会社(当時)として設立されました。2024年現在、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)*1、AMED先進的研究開発戦略センター(SCARDA)*2 及び厚生労働省*3 の支援により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)等に対するワクチンを、VLPセラピューティクス保有の自己増殖RNA(レプリコン)技術を用いて研究・開発中です。

  1. AMED事業名:令和2年度「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」(2次公募)/課題名「自己増殖RNAテクノロジーを用いたわが国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」
    https://www.amed.go.jp/koubo/11/02/1102C_00002.html
  2. AMED SCARDA事業名:令和5年度 「ワクチン・新規モダリティ研究開発事業(一般公募)」/課題名「レプリコンプラットフォームテクノロジーを用いた今後出現する株を含めたユニバーサルコロナワクチン開発」
    https://www.amed.go.jp/koubo/21/02/2102C_00004.html
  3. 厚生労働省:ワクチン生産体制等緊急整備事業(第2次公募)採択結果
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20482.html
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VLPセラピューティクスについて

VLP Therapeutics, Inc.(本社:米国メリーランド州ゲイサーズバーグ、CEO:赤畑渉)は2013年、世界の「満たされていないメディカル・ニーズ」に応え、従来のワクチン療法を一変する革新的な治療法を開発するため、赤畑渉が上野隆司博士、久能祐子博士らと設立しました。2024年現在、がんに対する治療ワクチンと、マラリア、デング熱、インフルエンザ等感染症に対する予防ワクチンの研究開発を進めています。

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赤畑渉(あかはたわたる)について

1997年、東京大学教養学部卒業、京都大学人間・環境学研究科入学。京都大学ウイルス研究所の速水正憲教授のもとHIVワクチンの研究開発に携わり、2002年に博士号取得。同年~2012年、米国立衛生研究所(NIH)ワクチン研究センター勤務。2009年からウイルス様粒子(VLP)を使ったチクングンヤ熱ワクチンを開発。2010年、同ワクチン研究成果を米科学誌Nature Medicineで報告、VLPが表紙を飾る*1。2012年、同ワクチン他3種類のアルファウイルスワクチン開発でNIH最高賞Director’s Award受賞。現在、VLP Therapeutics, Inc. CEO・創業者、VLP Therapeutics Japan株式会社 代表取締役・創業者・最高研究開発責任者、東京工科大学 客員教授、京都大学医学研究科 特任准教授、株式会社フェニクシー スペシャルフェロー。

  1. Wataru Akahata et al. A virus-like particle vaccine for epidemic Chikungunya virus protects nonhuman primates against infection. Nature Medicine 16, 334–338 (2010)
    https://www.nature.com/articles/nm.2105