VLP Therapeutics のデング熱ワクチン開発に GHIT Fund が資金提供

2016年10月5日、VLP Therapeutics, LLC(米国メリーランド州ゲイザースバーグ、以下「VLP Therapeutics」)は、デング熱の4つの血清型すべてを標的にするウイルス様粒子を使ってデング熱に対する新しいワクチンを開発するための初期段階研究に、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)から約96万ドルの資金を獲得したことを発表しました。デング熱は世界で最も深刻な公共保健問題の1つで、世界人口の半数以上がそのリスクにさらされており、毎年5000万人から1億人が感染しています。

VLP Therapeutics はゲイザースバーグに本社を置くバイオテクノロジー会社で、新しい独自のワクチン技術に基づいた治療用、予防用ワクチン、そして次世代の抗体薬の研究と開発に力を入れています。今回の資金は、日本の国立感染症研究所(NIID)と長崎大学熱帯医学研究所(長崎大学 ITM)の協力者と共有する予定で、VLP Therapeutics は自社の「ウイルス様粒子」(VLP)技術をこのプロジェクトに提供します。VLP ベースのワクチンは免疫応答の誘導作用が特に強いことが分かっており、VLP ベースのデングワクチンは、より短期間かつ少ない接種回数 (開発途上国でのコストとクリニック訪問を減らす重要な要素 ) で、デング熱の予防を可能にするものです。

VLP Therapeutics の創業者兼最高経営責任者である赤畑渉博士は「GHIT Fund の投資対象に選ばれたことを大変嬉しく思っています。この資金獲得によって VLP Therapeutics とその協力者にとってウイルスの4つの血清型すべてに立ち向かい、この顧みられない病気の負担を大きく減らす新たなワクチンの開発が容易になると考えています」と述べました。

デング熱は4つの異なる血清型のデングウイルスによって起こるため、4つの血清型のすべてに対して効果がある新ワクチンを開発することが不可決です。VLP Therapeutics はワクチン候補としてデング熱の血清型すべての遺伝子組み換えウイルス様粒子をつくり出すことに成功し、これが前臨床研究で非常に有望な結果を示しました。この度の GHIT Fund の資金獲得によってこの革新的な研究をさらに続けられることになります。

VLP Therapeuticsについて

VLP Therapeutics は、その創業者である赤畑博士が発見した独自のワクチン技術を基盤として、経験豊かな起業家のグループとともに2012年に設立されました。そのビジョンは、革新的な i-αVLP 技術を通じて、21世紀のグローバルな公衆衛生問題に取り組むことです。世界のアンメット・メディカル・ニーズに対応するために、従来のワクチンと標的抗体療法を一変させる治療を開発することをミッションとします。VLP Therapeutics は現在、がん、感染症、自己免疫疾患、及び神経疾患の予防及び治療ワクチンと次世代抗体医薬の開発を行っています。

国立感染症研究所について

1947年に日本で設立された国立感染症研究所は感染症およびそれと関連するさまざまな保健問題と闘うために基礎研究、応用研究を行っています。同研究所は予防医学の見地からさまざまな接触伝染病に関する広範で独自の研究を行っており、感染症を制圧することで人間の健康と福祉を向上させ、政府の健康、医療行政の科学的背景を明確にし、サポートしています。

長崎大学熱帯医学研究所(長崎大学 ITM)について

長崎大学 ITM は1942年に設立されました。その目的は熱帯病特に感染症とさまざまな保健問題の克服であり、関連機関と協力して以下の領域で努力を続けています。

  1. 熱帯医学と国際的な保健分野での先端的研究
  2. 研究成果の応用による熱帯での熱帯病の防圧ならびに健康増進への国際貢献
  3. 上記分野での研究者、専門家の養成

GHIT Fundについて

グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)は開発途上国の感染症、貧困との世界的な闘いに日本のイノベーション、投資、リーダーシップを以て国際提携を促進にするために設立されました。
同基金は 1) 開発途上国向け医薬品開発におけるグローバルな連携の推進、2)医薬品開発のグローバルな連携への投資、3)日本のグローバルヘルス分野における国際貢献の推進と強化によってこの使命を達成します。

Picture of VLPセラピューティクス・ジャパンについて

VLPセラピューティクス・ジャパンについて

VLP Therapeutics Japan株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:赤畑渉)は2020年、米国VLPセラピューティクスの100%子会社(当時)として設立されました。2024年現在、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)*1、AMED先進的研究開発戦略センター(SCARDA)*2 及び厚生労働省*3 の支援により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)等に対するワクチンを、VLPセラピューティクス保有の自己増殖RNA(レプリコン)技術を用いて研究・開発中です。

  1. AMED事業名:令和2年度「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」(2次公募)/課題名「自己増殖RNAテクノロジーを用いたわが国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」
    https://www.amed.go.jp/koubo/11/02/1102C_00002.html
  2. AMED SCARDA事業名:令和5年度 「ワクチン・新規モダリティ研究開発事業(一般公募)」/課題名「レプリコンプラットフォームテクノロジーを用いた今後出現する株を含めたユニバーサルコロナワクチン開発」
    https://www.amed.go.jp/koubo/21/02/2102C_00004.html
  3. 厚生労働省:ワクチン生産体制等緊急整備事業(第2次公募)採択結果
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20482.html
Picture of VLPセラピューティクスについて

VLPセラピューティクスについて

VLP Therapeutics, Inc.(本社:米国メリーランド州ゲイサーズバーグ、CEO:赤畑渉)は2013年、世界の「満たされていないメディカル・ニーズ」に応え、従来のワクチン療法を一変する革新的な治療法を開発するため、赤畑渉が上野隆司博士、久能祐子博士らと設立しました。2024年現在、がんに対する治療ワクチンと、マラリア、デング熱、インフルエンザ等感染症に対する予防ワクチンの研究開発を進めています。

Picture of 赤畑渉(あかはたわたる)について

赤畑渉(あかはたわたる)について

1997年、東京大学教養学部卒業、京都大学人間・環境学研究科入学。京都大学ウイルス研究所の速水正憲教授のもとHIVワクチンの研究開発に携わり、2002年に博士号取得。同年~2012年、米国立衛生研究所(NIH)ワクチン研究センター勤務。2009年からウイルス様粒子(VLP)を使ったチクングンヤ熱ワクチンを開発。2010年、同ワクチン研究成果を米科学誌Nature Medicineで報告、VLPが表紙を飾る*1。2012年、同ワクチン他3種類のアルファウイルスワクチン開発でNIH最高賞Director’s Award受賞。現在、VLP Therapeutics, Inc. CEO・創業者、VLP Therapeutics Japan株式会社 代表取締役・創業者・最高研究開発責任者、東京工科大学 客員教授、京都大学医学研究科 特任准教授、株式会社フェニクシー スペシャルフェロー。

  1. Wataru Akahata et al. A virus-like particle vaccine for epidemic Chikungunya virus protects nonhuman primates against infection. Nature Medicine 16, 334–338 (2010)
    https://www.nature.com/articles/nm.2105