2023年5月19日|VLP Therapeutics Japan株式会社
ポイント
- 新型コロナウイルスSタンパク受容体結合ドメイン(RBD)を細胞膜上に発現させるレプリコンワクチンをデザインし、開発を行った。
- RBDを細胞膜表面に発現させると、分泌型のRBDを発現させた場合と比較してより高い免疫がマウスで誘導された。また、ガンマ株のRBDを用いると、武漢株のRBDと比較してより広範かつ持続的な中和抗体価が誘導された。
- ハムスターおよび霊長類モデルを用いた攻撃接種実験2において、ワクチン防御効果が確認された。また、変異株に対する抗体が、霊長類モデルで少なくとも12ヶ月間維持された。
VLP Therapeutics Japan、医薬基盤・健康・栄養研究所、国立病院機構名古屋医療センター、北海道大学大学院医学研究院、大阪公立大学の研究グループは、細胞膜表面に新型コロナウイルス受容体結合ドメイン(RBD)を発現するレプリコン(次世代mRNA)ワクチンを開発しました。
本研究で、このレプリコンワクチンの免疫は、霊長類モデルにおいて効率的にT細胞およびB細胞応答を誘導することが分かりました。武漢株またはガンマ株 RBDで免疫したハムスターと霊長類では、新型コロナウイルス武漢株に対する防御効果を示しました。また、変異株に対するRBD特異的な抗体が、霊長類モデルで少なくとも12ヶ月間維持されることが分かりました。これらの結果から、このレプリコンプラットフォームは、今後のコロナウイルス変異株に対して持続的な免疫を誘導する有用なワクチン候補となり得ると考えられます。本成果は、今後の変異株に対するワクチン開発戦略としてだけでなく、他のパンデミック病原性ウイルスに対する基盤技術としての応用可能性が期待されます。
本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)ワクチン開発推進事業「自己増殖RNAテクノロジーを用いたわが国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」の一環として行われました。本研究成果は5月19日、英科学誌Nature Communications(電子版)で公開されました。【ニュースリリース全文:PDF】
論文情報
- 論文名:saRNA Vaccine Expressing Membrane-Anchored RBD Elicits Broad and Durable Immunity Against SARS-CoV-2 Variants of Concern.
- 雑誌名:Nature Communications
- 著者:Mai Komori+, Takuto Nogimori+, Amber Morey, Takashi Sekida, Keiko Ishimoto, Matthew Hassett, Yuji Masuta, Hirotaka Ode, Tomokazu Tamura, Rigel Suzuki, Jeff Alexander, Yasutoshi Kido, Kenta Matsuda, Takasuke Fukuhara, Yasumasa Iwatani, Takuya Yamamoto*, Jonathan F Smith*, Wataru Akahata*(+ 筆頭著者|*責任著者)
- DOI: 10.1038/s41467-023-38457-x
- URL: https://www.nature.com/articles/s41467-023-38457-x
関連報道・リンク
- 2023/5/27 読売新聞「国内開発中のコロナワクチン、免疫1年維持…接種間隔を延ばせる可能性」