【ニュースリリース】デング熱VLPワクチンでサルにおける中和抗体の誘導とウイルスの増殖抑制に成功[Journal of Virology論文]

2024年4月22日|VLP Therapeutics, Inc.

  • 4価デング熱VLPワクチン(DENVLP)は、強固で長期間持続する免疫を誘導した
  • 同ワクチンはデングウイルスの複製を減少させた
  • デングウイルス4つの血清型いずれでも生理的血清濃度において抗体依存性感染増強(ADE)を生じなかった

VLP Therapeutics, Inc.(米国メリーランド州、CEO:赤畑渉、以下「VLPT」または「VLPセラピューティクス」)、長崎大学、国立感染症研究所等の研究グループは、ウイルス様粒子(VLP)技術1を用いてVLPTが開発した4価デング熱(DENVLP)ワクチンをサルに接種し、高レベルの中和抗体が1年以上にわたり誘導されることと、4種類あるデングウイルス血清型の全てにおいて感染の重症度が軽減することを確認しました。また、本ワクチンの接種による試験管内の生理的血清濃度において抗体依存性感染増強(ADE)2は、4種のデング血清型いずれにおいても生じませんでした。これらの結果は、本ワクチンが4種のデング血清型全てに対して強固な免疫を誘導する有望なワクチン候補であることを示しています。
本研究は、グローバルヘルス技術振興基金の支援(GHIT Fund:G2016-109)を受けて実施されました。本成果は、米科学誌「ジャーナル・オブ・ビロロジー」電子版に2024年4月22日付けで掲載されました。VLPTは本成果を基に、臨床試験で本ワクチンの安全性と有効性を評価する計画です。【ニュースリリース全文:PDF

用語説明

  1. VLP技術:VLP(ウイルス様粒子)は感染性のある遺伝物質を含まないウイルス粒子で、ワクチンとして使用するとウイルスに由来する副反応を引き起こすことなく、強い免疫反応を誘発できる基盤技術。
  2. 抗体依存性感染増強(ADE):ウイルスの感染やワクチンの接種によって体内にできた抗体が、ウイルスの感染や症状をむしろ促進してしまう現象。

論文情報

  • 論文名:A Tetravalent Dengue Virus-like Particle Vaccine Induces High levels of Neutralizing Antibodies and Reduces Dengue Replication in Non-Human Primates
  • 雑誌名:Journal of Virology(American Society for Microbiology)
  • 著者:Daniel Thoresen+, Kenta Matsuda+, Akane Urakami, Mya Myat Ngwe Tun, Takushi Nomura, Meng Ling Moi, Yuri Watanabe, Momoko Ishikawa, Trang Thi Thu Hau, Hiroyuki Yamamoto, Yuriko Suzaki, Yasushi Ami, Jonathan F Smith, Tetsuro Matano, Kouichi Morita, and Wataru Akahata*(+筆頭著者|*責任著者)
  • DOI: 10.1128/jvi.00239-24
  • URL: https://journals.asm.org/doi/10.1128/jvi.00239-24
  • 公開日:2024/4/22
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VLPセラピューティクス・ジャパンについて

VLP Therapeutics Japan株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:赤畑渉)は2020年、米国VLPセラピューティクスの100%子会社(当時)として設立されました。2024年現在、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)*1、AMED先進的研究開発戦略センター(SCARDA)*2 及び厚生労働省*3 の支援により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)等に対するワクチンを、VLPセラピューティクス保有の自己増殖RNA(レプリコン)技術を用いて研究・開発中です。

  1. AMED事業名:令和2年度「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」(2次公募)/課題名「自己増殖RNAテクノロジーを用いたわが国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」
    https://www.amed.go.jp/koubo/11/02/1102C_00002.html
  2. AMED SCARDA事業名:令和5年度 「ワクチン・新規モダリティ研究開発事業(一般公募)」/課題名「レプリコンプラットフォームテクノロジーを用いた今後出現する株を含めたユニバーサルコロナワクチン開発」
    https://www.amed.go.jp/koubo/21/02/2102C_00004.html
  3. 厚生労働省:ワクチン生産体制等緊急整備事業(第2次公募)採択結果
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20482.html
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VLPセラピューティクスについて

VLP Therapeutics, Inc.(本社:米国メリーランド州ゲイサーズバーグ、CEO:赤畑渉)は2013年、世界の「満たされていないメディカル・ニーズ」に応え、従来のワクチン療法を一変する革新的な治療法を開発するため、赤畑渉が上野隆司博士、久能祐子博士らと設立しました。2024年現在、がんに対する治療ワクチンと、マラリア、デング熱、インフルエンザ等感染症に対する予防ワクチンの研究開発を進めています。

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赤畑渉(あかはたわたる)について

1997年、東京大学教養学部卒業、京都大学人間・環境学研究科入学。京都大学ウイルス研究所の速水正憲教授のもとHIVワクチンの研究開発に携わり、2002年に博士号取得。同年~2012年、米国立衛生研究所(NIH)ワクチン研究センター勤務。2009年からウイルス様粒子(VLP)を使ったチクングンヤ熱ワクチンを開発。2010年、同ワクチン研究成果を米科学誌Nature Medicineで報告、VLPが表紙を飾る*1。2012年、同ワクチン他3種類のアルファウイルスワクチン開発でNIH最高賞Director’s Award受賞。現在、VLP Therapeutics, Inc. CEO・創業者、VLP Therapeutics Japan株式会社 代表取締役・創業者・最高研究開発責任者、東京工科大学 客員教授、京都大学医学研究科 特任准教授、株式会社フェニクシー スペシャルフェロー。

  1. Wataru Akahata et al. A virus-like particle vaccine for epidemic Chikungunya virus protects nonhuman primates against infection. Nature Medicine 16, 334–338 (2010)
    https://www.nature.com/articles/nm.2105